2008年03月11日

幸福な食卓

瀬尾まいこの『幸福な食卓』<講談社>を読んだ。

映画化もされたから、もうほとんどの人は内容を知ってるんじゃないかと
思うんだけど、私は映画観てなかったから新鮮だった。


主人公・佐和子の家では、家族が毎朝必ず食卓を囲む。
その食卓は、家族が何かを宣言する場でもあるのだ。
今までにもここでは佐和子の兄・直ちゃんが「大学に行かない」宣言をし、
佐和子の母が「家を出る」宣言をしてきた。
そして今回は――

『父さんは、今日で父さんを辞めようと思う』

このせりふ、とても有名だよね。
こんなこと朝の食卓で言われたら、自分だったらどう思うだろう?
間違っても直ちゃんのように「いんじゃない?」みたいな返事は出来ないなぁ。

この本の中で直ちゃんの印象は強烈だった。
どこに父の一大事の時に遺書を探す息子がいるんだっ!
読みながら、桐野夏生の『リアルワールド』に出てくるテラウチを思い出した。
普段はへらへらっとしていて、何事にもテキトーなそぶりを見せるテラウチ。
だけど心の中では深刻な悩みを抱えて生きてる。
余裕そうで脆い、そんなところが二人はそっくりだ。

『リアルワールド』のテラウチは結局自殺してしまったけど、
直ちゃんは立ち直ってくれてよかった。
登場人物を冷たく突き放す桐野氏と温かく抱きしめる瀬尾氏。
まさかこんなところで比較するとは思ってなかった。


この本は4つの中篇連作からできてて、一つ一つの話の時期が違う。
でもストーリーも家族の問題も全部繋がってるから、佐和子や直ちゃんが
成長していくのがわかる。


瀬尾さんって、ハッピーエンドしか書かないのかと思ってた。
だから今まで安心して読んでいられたのに、今回のは驚いた。
びっくりして、思わず同じ行を2回読んだからね。

でも読めば読むほど、瀬尾さんの本が好きになる。
佐和子にあそこまで酷い仕打ちをしておきながら、最後まで彼女を見守ってる。
登場人物のみんなが愛しくて仕方ないんだろうな。


幸福な食卓

著者名:瀬尾まいこ(著)
出版社:講談社
出版年:2004.11
ISBN :9784062126731

posted by リリック at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本
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